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イスタンブールの奇跡

奇跡のスタジアムがもう一つ存在する。
記憶にも新しい04−05シーズンのチャンピオンズリーグ決勝戦。イスタンブールの「アタテュルク・オリンピヤット・スタジアム」で行われたこの試合。 イタリアのACミラン対イングランドのリヴァプール。共に赤をホームカラーとするチームだ。

試合は開始わずか1分で動き始める。 ミランのセットプレーから、イタリアの至宝と呼ばれ、ミランのキャプテンでもあるマルディーニが合わせ、1点をもぎとる。さらに攻撃の手を休めることはなく、ミランの猛攻は続く。22歳の若き天才カカからの絶妙なスルーパスに反応したシェフチェコが持ち込み、最後はクレスポにパス。なんなく2点目をあげた。
さらに前半終了間際、またもカカらのパスに反応し抜きん出たクレスポがこの日2点目を叩き込み、前半から3−0という圧倒的な力を見せ付けた。このとき、ミランサポーターや選手、監督、リヴァプールの選手ですらACミランの勝利を信じてやまなかった。

しかし、リヴァプールのスティーブン・ジェラードだけはその闘志を消すことはなかった。3点の重みを跳ね返すべく、彼はチームメイトを鼓舞し続けた。
そしてそれはやがて結果として出始めた。後半54分、リーセがあげたクロスをジェラードが技ありのヘディングシュートを放つ。ボールはゴールに吸い込まれるようにして入り、ACミランのゴールキーパー、ヂダも動けずにいた。その直後、まるで息を吹き返したかのようにリヴァプールの動きは良くなり、ミランを圧倒し始める。

わずかその2分後に2点目を決め、またもやその2分後。PKを獲得したリヴァプールはこれを一度は塞がれるも、落ち着いて押し込みこれで3−3。わずか6分間で3点。しかもチャンピオンズリーグ決勝戦でだ。

いつのまにか押していたはずのミランが苦しさを増し、リヴァプールは活気付く。
スタジアムには「You'll never walk alone」、リヴァプールの応援歌が大合唱で流れていた。

ミランの選手もサポーターも完全に闘志を砕かれていた。
目は虚ろになり信じられないといった様子。無理もない。勝利を確信していたはずの試合がまさかこんなことになるとは思ってもいなかっただろう。完全に冷静さを失ったミランと、活気づくリヴァプール。このいきおいのまま、リヴァプールがPK戦を制し、欧州王者の名に輝いた。これをイスタンブールの奇跡と呼び、リヴァプールがさらなる強みを増したのもこの試合を経験したからだと言える。

ちなみに、ミラニスタ(ミランを愛するサポーター)のまえで、この話をすると半殺しの刑をくらうので気をつけるように。


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