続いて紹介するスタジアムが、「ヴェストファーレン(ベではなくヴェ)」だ。
身近なところでは06年ワールドカップ、日本代表の第3戦目の相手、世界王者ブラジルとこのスタジアムで対戦する。
このスタジアムはドイツ屈指の名門、ボルシア・ドルトムントのホームスタジアムだ。サッカー専用のスタジアムで、8万3千人を収容する。もちろん規模はドイツ最大だ。しかし、かつてはヨーロッパを制した名門クラブも今では多額の負債に苦しみ、一時は倒産寸前まで追い込まれた。主力を売り払い、その得た移籍金でやりくりをする。そうすれば当然戦力は低下し、試合に負けてしまうという悪循環に陥っていたクラブ。そんな状況にあってもサポーターはクラブを見捨てず、スタジアムに通い続けた。
これはちょうど日本の阪神タイガースに似ている。昔はヨワヨワだった阪神を支え続けたのは他でもないタイガースファンと、甲子園球場である。野球とサッカーは全く別の球技だが、この辺は非常に酷似しているのがわかる。
このドイツで一番熱いサポーターたちが、スタジアムをチームカラーの黄色で埋め尽くす光景は、圧倒的な威圧感を相手に与える(それでも勝てないのは問題なのだが……)。
まるでスタジアムごと敵にまわしたような錯覚さえおこす。そしてまたこの黄色が緑のピッチによく映え、絶妙なコントラストを生み出す。その光景は圧巻の一言だ。
また、このスタジアムの芝はヨーロッパでも屈指のコンデションであると認定されており、選手たちのスムーズなプレーを邪魔せず、うまく引き出していると言えるだろう。また、このスタジアム自体にも色々な工夫がこなされている。
上の階でも会場が見やすいように、傾斜が上に行くほどきつめに設定してある。それだけではない。なんとちゃんと高齢者にも上りすいよう手すりを取りつけてある。サポーターにもお年寄りにも優しい設計となっているのがわかる。
しかしそんなヴェストファーレンも「ネーミングライツ(命名権と引き替えに莫大な契約金が手に入る)」によりスタジアムが「シグナル・イドゥナ・パーク」に変わってしまった。これは非常に悲しいことである。しかし、クラブ自体が潰れてしまっては元も子もないので、非情なる判断と言える。
しかし、私はあえて親しみを込めて呼び続けたい。「ヴェストファーレン」と
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