欧州のスタジアムの話をしてきたが、我が日本のスタジアムはどうなのだろうか?
今回は筆者が実際に訪れたこともある、愛知県豊田市にある「トヨタスタジアム(正式には豊田スタジアム)」について紹介したい。
名古屋グランパスのホームスタジアムとして2001年にオープン。
それまでグランパスのホームスタジアムと言えば名古屋市にある「瑞穂陸上競技場」だったのだが、収容人員約2万人とやや小さめのものであったのだ。サッカークラブにおいて毎試合観客から得られる入場料収入は大きな財源としてクラブの懐を潤す。そのため、より多くの収入を得るために収容人員の多いスタジアムを建設するのは当然と言えば当然なのだ。
かくして豊田スタジアムは完成していくわけだが、忘れもしない2001年10月6日。このスタジアムでのこけら落としゲームは、名古屋の英雄ドラガン・ストイコビッチの引退試合だった。もはや彼について説明はいらないだろう。名古屋に数々の勝利をもたらした男が古巣であるレッドスター・ベオグラードを招き、対戦した。前半、彼はレッドスターの選手として参加。それは「最後にグランパスを敵にして戦いたくない」という理由からだった。後半、栄光のナンバー10は何の違和感もなくピッチで躍動していた。
華々しくその歴史の幕を開けた豊田スタジアムだったが、日韓ワールドカップの開催候補土地に挙がっていたのだが、新潟との戦いに敗れ、残念ながらワールドカップは開催されなかった……。
しかし、筆者はなぜ開催されなかったのか、分かった。
まず、アクセスの悪さだ。名古屋駅からなら地下鉄に乗り換え、鶴舞線伏見駅から名鉄豊田線を乗っていくのが最短ルートだろうが、約45分ほどかかるうえに運が悪ければ乗り継ぎでかなり待たされる。さらに豊田市駅を降りてから約20分歩かなければならない。シャトルバスも出ているが、人がいっせいに群がるうえに運行の間隔が長いため、あまりオススメできない。
そして2つ目はスタジアム内についてだ。私は実際にピッチに降りたことがあるのだが、芝があまり誉められる状態ではなかった。テレビでもよく芝がはげているのを目にするが、天井の屋根が光を遮り、十分に育たないのだろう。
そして客席。4階席まであるのだが、1階席は確かに大変見やすい。しかし上に行くほど傾斜がきつくなる。売り子のバイトの知人に聞いたのだが、4階席に至るとまるでスキーの上級者コースを思わせるほどの傾斜だそうだ。上述したカンプ・ノウは5階席でも無理な傾斜がついていないのだと言う。それは「老人」にも配慮された作りだからだ。ヨーロッパでは老男若女に人気を誇るサッカー。老人が無理な傾斜の席に座ればどうなるか、そこまで配慮が行き届いているのだ。
日本で本当にこのスポーツを普及させるには老人を含めた様々な世代のニーズに合わせたソフト・ハード面の改良を加えていかなければならないだろう。
Jリーグが本気で「百年構想」を目指すのなら。
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